1. 行列式とは何か
行列式は、正方行列に対して定まる1つの数です。2×2行列、3×3行列、4×4行列のように、行と列の数が同じ行列で計算できます。線形代数では、行列式が0かどうかによって逆行列の有無を判断したり、連立方程式の解の性質を調べたりします。
3×3行列式の計算方法を学ぶ目的は、単に公式を暗記することではありません。どの成分を掛け、どの積を足し、どの積を引くのかを整理できるようになると、逆行列、固有値、連立方程式の理解にもつながります。
2. 2×2行列式の復習
3×3行列式に入る前に、2×2行列式を確認します。2×2行列式は、左上から右下への積から、右上から左下への積を引いて求めます。
2×2行列式の公式
| a b ; c d | = ad - bc
例:| 2 3 ; 1 4 | = 2×4 - 3×1 = 8 - 3 = 5
この「右下がりを足す、右上がりを引く」という考え方は、サラスの公式でも使います。3×3では対角線の本数が増えるため、どの3つを足して、どの3つを引くのかを表で整理するとわかりやすくなります。
3. サラスの公式とは
サラスの公式は、3×3行列式をたすき掛けのように計算する方法です。3×3行列の右側に1列目と2列目をもう一度書き足し、右下がりの3本の積を足して、右上がりの3本の積を引きます。
3×3行列式の形
| a b c ; d e f ; g h i |
サラスの公式では、aei + bfg + cdh - ceg - bdi - afh と計算します。
重要なのは、サラスの公式は3×3行列式専用だという点です。4×4以上の行列式では、余因子展開や行基本変形など別の方法を使います。この記事では、まず3×3行列式を確実に計算できることに集中します。
4. 3×3行列式の計算手順
3×3 行列式 計算では、次の順番で進めると符号ミスを防ぎやすくなります。慣れるまでは、右下がりの積と右上がりの積を別々に書き出してください。
サラスの公式の手順
- 3×3行列の右側に1列目と2列目を書き足す
- 右下がりの積を3つ作って足す
- 右上がりの積を3つ作って足す
- 右下がりの合計から右上がりの合計を引く
| 方向 | 積 | 扱い |
|---|---|---|
| 右下がり | aei, bfg, cdh |
足す |
| 右上がり | ceg, bdi, afh |
引く |
5. 例題1:基本の3×3行列式
次の行列式をサラスの公式で計算します。
| 1 2 3 ; 0 4 5 ; 1 0 6 |
右下がりの積を足す
1×4×6 = 242×5×1 = 103×0×0 = 0
右下がりの合計は 24 + 10 + 0 = 34 です。
右上がりの積を足す
3×4×1 = 122×0×6 = 01×5×0 = 0
右上がりの合計は 12 + 0 + 0 = 12 です。したがって、行列式は 34 - 12 = 22 になります。
| 1 2 3 ; 0 4 5 ; 1 0 6 | = 22
6. 例題2:負の数を含む行列式
次は、負の数を含む3次行列式です。サラスの公式そのものは変わりませんが、積の符号に注意します。
| 2 -1 3 ; 1 0 -2 ; 4 5 1 |
右下がりの合計
2×0×1 = 0(-1)×(-2)×4 = 83×1×5 = 15
右下がりの合計は 0 + 8 + 15 = 23 です。
右上がりの合計
3×0×4 = 0(-1)×1×1 = -12×(-2)×5 = -20
右上がりの合計は 0 + (-1) + (-20) = -21 です。最後に右下がりの合計から右上がりの合計を引くため、23 - (-21) = 44 になります。
| 2 -1 3 ; 1 0 -2 ; 4 5 1 | = 44
7. よくあるミスと対処法
行列式 計算方法を理解していても、実際の計算では符号や引き算の順番で間違えることがあります。特に負の数を含む問題では、途中式を省略しないことが大切です。
| ミス | 原因 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 右上がりの積も足してしまう | サラスの公式の引き算を忘れている | 右下がり合計 - 右上がり合計の形で書く |
| 負の数の積で符号を間違える | マイナスを括弧で囲んでいない | (-1)×(-2)×4 のように書く |
| 対角線を1本抜かす | 列を書き足さずに暗算している | 1列目と2列目を右に再掲してから線を引く |
| 4×4行列にも使ってしまう | サラスの公式の適用範囲を混同している | サラスの公式は3×3専用と覚える |
8. 計算ツールで検算する方法
手計算で3×3行列式を求めたら、最後に計算ツールで検算すると安心です。当サイトの 行列計算ツール では、行列の加算、減算、乗算に加えて、行列式や逆行列も確認できます。
学習では、最初からツールだけに頼るより、サラスの公式で一度手計算し、そのあとツールで答えを照合する方法がおすすめです。どこで間違えたかを見つけやすくなり、符号ミスにも気づきやすくなります。
9. よくある質問
ad-bc を使い、4×4以上では余因子展開や行基本変形など別の方法を使います。
23 - (-21) のように、最後の引き算を省略せずに書くと防ぎやすくなります。
10. まとめ
3×3行列式の計算方法は、サラスの公式を使うと整理しやすくなります。右下がりの積3つを足し、右上がりの積3つを引くという流れを守れば、基本的な3次行列式は短い手順で求められます。
ただし、負の数を含む問題では符号ミスが起きやすいため、途中式を省略しないことが大切です。右下がりの合計と右上がりの合計を分けて書き、最後に「右下がり合計 - 右上がり合計」として計算しましょう。
手計算に慣れてきたら、行列計算ツール で検算すると理解が定着しやすくなります。公式を覚えるだけでなく、どの積を足し、どの積を引くのかを説明できる状態を目指すと、行列式の学習がかなり楽になります。