1. 負の数の平方根は実数にない
実数で負の数を二乗すると、答えは必ず正の数か0になります。たとえば 3^2=9 だけでなく、(-3)^2=9 です。数の符号がどちらでも、同じ数を2回掛けると負号どうしが打ち消し合うため、積は負になりません。
そのため、実数 x で x^2=-9 を満たすものはありません。正の数の平方根なら \sqrt{9}=3 と求められますが、負の被開平数には同じ考え方を使えません。学校の問題で「平方根を求める」と指定され、範囲が実数に限られているなら、負の数の平方根は「存在しない」と答えます。
「実数では答えがない」と「数学全体で扱えない」は同じ意味ではありません。数の範囲を複素数へ広げると、負の数の平方根も一貫した規則で計算できます。
2. なぜ負の数の平方根は実数で計算できない?
平方根は、二乗すると元の数になる値です。もし \sqrt{-4} が実数だと仮定すると、その値を二乗して -4 になる必要があります。しかし、実数の正負を問わず、二乗した結果は0以上です。正の平方根を探す、負の平方根を探すというだけでは、この条件を満たせません。
数直線上で考えると、実数の二乗は0を境に左右どちらの数でも正になります。-4の位置へ戻る二乗の値は、実数の数直線上には見つかりません。複素数では、実数の軸に直角な「虚数の方向」を加えることで、この行き止まりを越えて計算します。
一方、\sqrt{(-4)^2} は別の計算です。根号の中を先に計算すれば16となり、主平方根は4です。負の数を二乗してから平方根を取る操作と、負の数そのものの平方根を求める操作を混同しないでください。
3. 虚数単位iと負の平方根の基本
虚数単位 i は、i^2=-1 を満たす数として定められています。つまり、-1 の平方根を複素数で表すと、主平方根は i です。もう一つの平方根は -i で、二乗するとどちらも -1 になります。
この決め方を使うと、負の数 -a は (-1)\times a と分けられます。平方根の主値として、\sqrt{-a}=i\sqrt{a} と表し、正の数 a の部分は通常どおり簡単にします。たとえば、\sqrt{-25}=i\sqrt{25}=5i です。
複素数は一般に u+vi の形で書きます。u は実部、v は虚部の係数です。5i は 0+5i と見られるため、実部は0、虚部は5です。ここでいう「虚」は、答えが計算不能という意味ではなく、実数だけではない数の種類を表します。
4. 負の根号をi√aに直す手順
負の数の平方根を複素数で表すときは、根号の中の負号を -1 と正の数に分けます。次に \sqrt{-1}=i を使い、残った正の平方根を簡単化します。計算する前に、被開平数が本当に負か、問題が平方根の値を聞いているのか方程式の解を聞いているのかも確かめましょう。
- 負号を分ける: \sqrt{-a}=\sqrt{(-1)\times a} と見る。
- iに置き換える: \sqrt{-1}=i を使い、i\sqrt{a} の形にする。
- 正の根号を整理する: 平方数の因数があれば外へ出す。
- 問いに合わせて符号を決める: 主平方根なら1つ、二次方程式なら通常は正負の両方を書く。
例として \sqrt{-12} を考えます。12は 4\times3 なので、\sqrt{-12}=i\sqrt{12}=i\sqrt{4\times3}=2i\sqrt{3} です。根号の中にある平方数4だけを外へ出し、3は根号内に残します。
同じ手順で \sqrt{-18}=i\sqrt{18}=3i\sqrt{2}、\sqrt{-48}=i\sqrt{48}=4i\sqrt{3} となります。最後に答えを二乗して元の負の数へ戻るか確かめると、係数や符号の誤りを見つけやすくなります。
5. 負の数の平方根の計算例
負の根号を見たら、実数の範囲で答える問題か、複素数まで扱う問題かを先に読みます。複素数での主平方根は、根号の外に余計な ± を付けずに表します。値を検算するときは、得られた複素数を実際に二乗します。
| 式 | 主平方根 | 確認 |
|---|---|---|
| \sqrt{-1} | i | i^2=-1 |
| \sqrt{-16} | 4i | (4i)^2=16i^2=-16 |
| \sqrt{-27} | 3i\sqrt{3} | (3i\sqrt{3})^2=-27 |
| \sqrt{-50} | 5i\sqrt{2} | (5i\sqrt{2})^2=-50 |
たとえば \sqrt{-27} は i\sqrt{27}=i\sqrt{9\times3}=3i\sqrt{3} です。検算では 3^2=9、(\sqrt{3})^2=3、i^2=-1 を掛け合わせ、9\times3\times(-1)=-27 に戻ることを確認します。
根号の中に平方数が含まれない場合、これ以上簡単にできないことがあります。たとえば \sqrt{-7}=i\sqrt{7} はそのままが簡単な形です。小数に直す必要がなければ、無理に近似値へ変えず、正確な式のまま残します。
6. 主平方根とx²=-aの解は違う
平方根の記号 \sqrt{z} は、複素数でも通常は主平方根という1つの値を示します。一方、方程式 x^2=z の解をすべて答えるときは、二乗して同じ値になる数をすべて挙げます。正の数でもこの違いはあり、\sqrt{9}=3 ですが、x^2=9 の解は x=\pm3 です。
| 問い | 答え | 意味 |
|---|---|---|
| \sqrt{-9} | 3i | 主平方根を1つ示す |
| x^2=-9 | x=3i,\ -3i | 方程式を満たす解をすべて示す |
| -\sqrt{9} | -3 | 実数の主平方根に負号を付けた値 |
この違いは「根号を見たら必ず ± を付ける」という決まりがないために生まれます。根号の値を聞かれたら主平方根を答え、方程式の解を聞かれたら代入して条件を満たす値をすべて確認します。問題文の「平方根」と「方程式を解く」を読み分けると、符号の迷いを減らせます。
7. 負の平方根で符号を間違えやすい例
負号が根号の内側か外側かを確認する
\sqrt{-9} と -\sqrt{9} は同じ式ではありません。前者は複素数まで扱えば 3i、後者は実数の -3 です。負号が根号の中にあるか、根号全体の前にあるかを、式を書き写す段階で確かめます。
平方根の答えに正負を付ける条件を読む
「平方根の主値」を求めるなら1つの値を答えます。「二次方程式の解」をすべて求めるなら、正負の両方を調べます。たとえば \sqrt{-4}=2i ですが、x^2=-4 の解は x=\pm2i です。
複素数でもiを含む積を二乗して検算する
i を含む式では、i^2=-1 を忘れると符号が逆になります。(2i)^2 は 4i^2=4(-1)=-4 です。係数だけを二乗して4と答えるのではなく、虚数単位も一緒に二乗します。
根号の性質を負の数へそのまま当てはめない
実数の範囲で成り立つ平方根の性質を、定義域の確認なしに複素数へ広げると誤りになる場合があります。特に \sqrt{a}\sqrt{b}=\sqrt{ab} の形は、負の数を含むと主平方根の値が一致しないことがあります。式を変形する前に、実数の範囲で使っているのか複素数の範囲で使っているのかを確認しましょう。
迷ったときは、変形後の答えを二乗して元の式と比べます。平方根を簡単にする計算手順は根号を含む式の計算ガイド、基本の定義や正の平方根は平方根計算の完全ガイド、例題での練習は平方根の計算問題でも確認できます。
8. 平方根計算機で答え合わせするときの注意
一般的な平方根計算機は、実数の入力を前提にしていることがあります。その場合、負の数を入れるとエラーになったり、複素数に対応していない旨が表示されたりします。表示されたエラーは、計算機の対応範囲を示すもので、複素数としての平方根が存在しないという意味ではありません。
正の数の根号の簡単化や小数値を確認したい場合は、当サイトの平方根計算機を使えます。負の被開平数を扱う問題では、まず紙面で \sqrt{-a}=i\sqrt{a} と変形し、正の根号部分を計算してから、必要に応じて複素数に対応した計算環境で確認してください。
学習中は、結果だけを機械に任せるより、負号を分ける手順と二乗による検算を自分で書くのが確実です。小数近似と正確な根号形のどちらを求めるかも、解答の条件に合わせて選びます。
9. 負の数の平方根に関するよくある質問
まとめ
負の数の平方根は実数では見つかりませんが、複素数では i^2=-1 を使って表せます。正の数 a に対する主平方根は \sqrt{-a}=i\sqrt{a} です。平方根の記号は主平方根の1つを示し、方程式 x^2=-a の解をすべて求めるときは \pm i\sqrt{a} を使います。
負号が根号の内側か外側か、答えが主平方根か方程式の解かを確かめ、最後に二乗して検算しましょう。実数の平方根計算の基本は平方根計算の完全ガイド、5の平方根の近似や黄金比との関係は5の平方根の解説で続けて学べます。